公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 もしかして、このいまのやりとりってバイオレンス系やミステリー系小説に出てくるような心理戦なの? ヒロインと悪役との頭脳戦なわけ?

 わたし、いまの挑発にのらなきゃってやつ?

 それとも、クールに笑い飛ばす?

 姉がわたしを嫌っていたのは事実だし、わたし自身や第三者にひどいことだって言っていた。いまさらその事実を突きつけられてもなにも感じない。

「でしょうね」

 ショックを受けるようなリアクションはぜったいにしない。それも面白かったかもしれないけれど。

 だけど、クールなレディを前面に押し出したい。だから、一言で片づけた後に「フンッ」と鼻を鳴らしておいた。
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