公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「ってだれだ、貴様?」

 ジェロームをはじめ、男たちの顔に「?」が浮かんでいる。

 おもわずふいてしまった。

 ジェロームや男たちにしてみれば、公爵やイーサンは超大物だけれどボスなんてたかだか人のいい「ハゲ親父」なんですもの。

 だれ? ってことになるわよね。

 そのとき、すぐ頭上からおなじようにふきだした音がした。

 公爵がふきだしたのである。

 見知らぬ「ハゲ親父」の登場に、彼も気勢をそがれてしまったのかもしれない。

「さあ、どうする? ぼくが相手をしてもいいし、閣下に相手をしてもらってもいい。いずれにせよ、全員タダではすまないけどね。ぼくは慈悲深い。選ばせてあげるよ」

 イーサンの声のトーンがガラッとかわってしまった。

 初対面のときよりもずっとずっと低く凄みのある声質に、背筋がゾクッとしてしまった。
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