公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね

「お、おいっ！」
「ま、待ってくれ」
「置いていかないで」

　みんないっせいに、慌ててジェロームを追いかけ始めた。

「ジェフ、ネイサン」

　なぜか公爵がエドモンド兄弟の名を呼んだ。

　公爵とエドモンド兄弟って知り合いなの？　当然、その疑問がわいてくる。

「閣下、抜かりはありません」
「連中の行く手には、憲兵隊が待ちかまえているだけです」

　ジェフに続いてネイサンが言った。二人の伊達メガネの下には、「これぞ不敵」といっていい凄みのある笑みが浮かんでいる。