公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 が、姉が死んだ。厳密には殺された。そのあたりの事情は、これからイーサンがジェロームたちを尋問してくれるから明るみになるかもしれない。

 公爵は、姉の死後わたしを後妻としてよこすよう、すぐさま使いを出すはずだった。ギャラガー男爵家の借金の肩代わりを理由にして、である。だけど、わたしの方から現れた。

 それ以降、公爵がボスたちのかわりにわたしを守ってくれた。

「じつは、ウインズレット公爵家の使用人たちも諜報員なのだ。つまり、クラリスは四六時中見張られていたわけだ。ミユ、すまなかった。誤算だったのは、メイド役のジリアンにクラリスの正体の一部分を伝えるよう命じたことだ。きみが彼女のことで気に病んでいるようだから、彼女はけっしていい妻のまま死んだのではないと知って欲しかった。まさか、彼女の死因が堕胎手術によるものだと偽装されていたとは気がつかなかったのだ」

 公爵はこちらに手を伸ばし、わたしの手をそっと握った。
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