公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「どいつもこいつも、いずれ決着(カタ)をつけなければならない。叔父上……」
「はいはい、わかているさ」

 公爵に応じたいまのボスの「はいはい」は、イーサンの言い方にそっくりだった。

 それでもやはり、二人が親子とは信じられない。

 それはともかく、とりあえずボスとイーサンとエドモンド兄弟に別れを告げ、公爵と二人でウインズレット公爵邸へ帰ることにした。

 まだ夜明け前のこの時間帯、街馬車すら通っていない。

 歩いて帰った方がよほどはやい。

 わたしがエルガー帝国の諜報員たちに尾行され始めると、エドモンド兄弟が公爵に知らせてくれた。

 知らせを受けた彼は、飛び起きて眠っていたそのままのシャツとズボンで屋敷を飛び出したらしい。

 それこそ、馬の準備をする間もなく。
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