公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 あっと思う間もなかった。

 彼の太くて立派な両腕にがんじがらめにされてしまった。そのときには、彼の唇がわたしのそれに重なっていた。

 生まれて初めての口づけは、小説のように甘酸っぱいものではなかった。

 わたしの顔の上部分に、銀仮面が容赦なく押し付けられた。それがまた痛いのなんのって。

 というわけで、初口づけの感想というか印象は「痛い」である。

 それはともかく、明け方の人っ子一人いない南街区の路上で、わたしたちはしばし唇を重ねた状態でいた。
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