公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね

公爵の素顔

 気がついたら、彼の唇がわたしのそれから離れていた。

 だけど、まだ彼に抱かれたままでいる。

 大きな彼がわたしを抱く姿は、大小の差がありすぎて滑稽に見えるに違いない。

 明け方でよかった。つくづくそう思う。だれかに見られでもすれば、わたしはともかく公爵は恥ずかしいでしょうから。

 しらじらと夜が明けつつある。早朝の独特のにおい、それから肌に突き刺さるような鋭い寒気。

 火照った体には、どちらも気持ちがいい。

 会話はない。いまは、それがかえってありがたい。

 昨日から今朝にかけていろいろなことがありすぎた。正直、心も体もついていけていない。
< 252 / 356 >

この作品をシェア

pagetop