公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 ああ、そうよね。この世の中には男性も女性もいっぱいいて、それぞれの好みや合う合わないがある。

 公爵は、ただ単純に「こんなの」がお好みなだけかもしれないわね。

 そこまで考えたとき、朝の陽の光が周囲を照らしだした。彼の銀仮面がその陽光を受けてキラリと光る。

「あの、公爵閣下。お願いがあるのですが」
「ミユ、なんだ? なんでも言ってくれ」
「銀仮面です。事情があると思いますが、表情がわかりにくいですし、その、先程のようなときには顔に、その、あたって痛かったりするので、なんといいますか差し支えなければ取っていただけないでしょうか?」

 断られることを前提に頼んでみた。
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