公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 彼の見た目とこれまできいた彼の情報だと、ひたすら不愛想でわたしを嫌っているとしかわからない。

 しばらく厄介になるのなら、好きになってもらうことは不可能でも、名前くらい覚えてもらいたい。その為には、わたし自身も努力するべきね。

 なにもしないままでわが身の境遇を嘆くのは性に合わない。

 出来ることをやってかなわないというのならあきらめもつく。だけど、なにもしないまま終わるのはいろいろな意味でダメだと思う。

 それと、使用人のみんなのことも知りたい。

「旦那様は、いったん国境地域に参られました。状況は落ち着いてきているそうですから、もしかすると屋敷に戻られて長期間すごすことが出来るようになるかもしれません」

 モーリスが教えてくれた。
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