公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね

ミユ、諜報員に憧れる

「ねぇ、ジリアン。きかせて」

　わたし専属のメイド役のジリアンが部屋に来るたびにねだってしまう。

「出来ません」

　そして、彼女はわたしの願いをピシャリと拒否ってしまう。

「旦那様から、『ミユには話してはならない』と厳しく仰せつかっているのです」
「わああっ！　うまいわね。いまの、ブレントン様にそっくりだったわ」
「エヘンッ！　わたしたちは、物真似や演技が出来なければなりません」

　彼女は腰に手をあて、胸を張って誇らしげに言った。