公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「なるほど。ジェロームと彼の部下たちは、こちら側の有力者を飼っているのではなく、飼われているわけか」
「いいや、イーサン。持ちつ持たれつというやつだろう」
「その通り。カッコよく表現すれば、共闘? どちらにせよ、ジェロームがポンコツでよかった」

 イーサンに続き、ジェフとネイサンが苦笑しながら言った。

「こんな手紙、即座に燃やすべきだった。というか、そもそもこのように文字で残すことじたいおかしすぎる。証拠になるようなもを残すなどと、諜報員として失格だ。エルガー帝国の諜報員たちの質も落ちたものだ。というか、ジェロームも長年わが国に潜入していてぽんこつになってしまったに違いない」

 そして、ボスはジェロームのことをそう評して笑った。

 姉は、酔ったジェロームからこの封筒をこっそり盗んだに違いない。ぽんこつなジェロームは、姉に脅されるまでそれを盗まれていることに気がつかなかった、というところかしら。

 だとすると、彼はあまりにもぽんこつすぎるわね。
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