公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「疎まれまくっているのです。閣下だけでなく、これまでの当主も。なにせファース王国軍を統べていますからね。閣下がその気になれば、あっという間にこの国を武力で制圧できます。王家だけでなく宰相たちは、それを怖れています」
「ああ、なるほど。だから、国境警備というどうでもいい任務をおしつけて王都から遠ざけているのね」
「さすがはミユ様。そのとおりです。が、一方で、閣下に頼らざるを得ない面もあります。たとえば、戦争や閣下以外のだれかが謀反や反乱を起こしたとき、それをおさえられるのは閣下しかいません」
「微妙なのね。だったら、命を狙われようが危険が迫ろうが、泣き寝入りするしかないわけ? 黒幕は宰相か、それに近い者であったとしても、手をだせないままでいるわけ?」
「そうもいかない。結局、宰相はエルガー帝国に情報を渡している。おれに関してのな。軍事に関する情報が流れていることに関しては、けっして許容出来ない」
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