公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 ブレントンは、歯噛みしている。

 どうにかしたくても出来ないことが口惜しいに違いない。

「だったら、殺したらどうですか? 宰相は、息子が一人ですよね? 以前、王宮の図書館の近くでオールポート公爵子息を見かけたことがありますが、正直、彼に宰相が務まるとは思えません。はっきり言って、おちゃらけた遊び人です。そんな彼が宰相の地位を継いだとしたら、こちらもやりやすくなるのではないでしょうか? もしかしたら、宰相は焦っているのかもしれませんね。跡継ぎがあんなわけですから。自分が少しでもその地位に居座すつもりなのか、あるいは継がせても大丈夫なように万全の態勢を整えたいのか……」
「なるほど」
「暗殺、か」

 物騒なことを提案してみた。

 小説ではこういうパターンがよくある。

 なんだったかしら? 「目には目を、歯には歯を」? 小説の主人公たちは、こんな感じでやり返すのよ。

 まぁそういうのは、小説だから大義名分が必要で悪事や後ろ暗いことをするのに言い訳をしているのにすぎないけれど。
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