公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 モーリスが「お茶でも飲みながら話をしませんか?」と誘ってくれたので、全員で厨房に移動した。

 そこでは、まだ料理長と見習いが二人残っていた。

 そこでもやはり自己紹介をしあい、見習いたちがお茶とクッキーを準備してくれ、厨房の一画にある使用人たちが食事をするスペースで話をすることになった。

 姉は、子どもの頃からわたしに対してだけは意地悪だった。意地悪や嫌がらせや誹謗中傷や理不尽極まりない事を命令しただけではない。叩かれたり蹴られたりといった暴力もしょっちゅうふるわれた。

 だけど、わたしは両親にすらそのことを話したことがない。貧乏でいつもひもじく情けない思いをしているから、ストレスがたまってそのはけ口をわたしに求めている。そう思うようにしていた。

 彼女はわたし以外の両親も含めた人たちに対しては従順でおとなしく、やさしく親切でよく気のつくレディだった。

 だからこそ、嫁ぎ先であるウインズレット公爵家でも「親切で思いやりのある公爵夫人」であるとばかり思いこんでいた。


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