公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「ミユ」

 彼の銀仮面がわたしの顔に近づいてきた。

「コホン」

 咳払いがし、彼と二人でハッとした。

 恐る恐るそちらの方へ目を向けると、いつの間にかジリアンたちがクローゼットの中から出てきてこちらを見つめている。

「だああああっ」

 ブレントンは、悲鳴とともにわたしから飛び退った。そんな彼が可愛すぎる。

「旦那様。奥様は、いまからドレスを試着されます。申し訳ございませんが、席をはずしていただけませんか?」
「ジリアン、向こうを向いている。それでいいだろ……?」
「旦那様、きこえませんでしたか?」

 ジリアンの声質がかわった。

 その低い獣のうなり声のような声は、強面バージョンのときのイーサンのそれを思い起こさせた。
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