公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「わ、わ、わかった。いますぐ出て行くから」

 あっさり降参してしまうブレントン。そんな彼もまた可愛らしい。

 彼は、わたしにはにかんだ笑みを浮かべてから踵を返そうとした。

「そのドレスなのか? ミユがそのドレスを?」

 彼は、ジリアンが胸元に抱えているドレスを指差した。

 そのドレスは、亡き姉のドレスの中でまだ耐えうる色とデザインのものである。ジリアンは、ちんちくりんのわたし用に仕立て直してくれた。

 何着も試着し、彼女たちが検討した結果が、そのドレスなのだ。
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