公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「イタタタタ。このバカ力女っ!」

 イーサンは、途端に可愛い顔を苦痛にゆがめる。

 ジリアン、あなた強いわ。

 彼女は、子どものときからイーサンをうまく使いまくっているに違いない。

 それに、彼女は「今夜はパートナーのふりをしている」と言ったけれど、ほんとうはそうではないに違いない。

「ミユ。二人もそろそろ婚儀を上げればいいのに、どうやらまだ踏ん切りがつかないらしい……」
「旦那様っ」
「す、すまない」

 ブレントンが言っているところにジリアンが睨みをきかせたものだから、彼はシュンと俯いてしまった。

 ジリアン、やはりあなたは強すぎるわ。

 ブレントンもまた、彼女に子どものときから手厳しく言われたりされたりし続けているに違いない。

 それを想像すると、知れず笑みが浮かんでしまう。

 そのタイミングで、馬車が宮殿前に到着した。
< 318 / 356 >

この作品をシェア

pagetop