公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「ミユ、大丈夫か?」

 ライトアップされている宮殿そのものや宮殿前の大広場は、昼間のように明るい。

 その光を吸収した銀仮面は、不敵な光をたたえている。

「ブレントン様、もちろんですとも。あなたが側にいらっしゃるのですから」

 おべっかや社交辞令ではない。ほんとうにブレントンがいてくれるから、不思議と不安ではない。だから緊張もしていない。

 もちろん、イーサンやジリアン。それから、もう一台の馬車で来ているボスやエドモンド兄弟の存在もある。

「では、まいりましょう」

 イーサンが言ったタイミングで、馭者役のロバートが馬車の扉を開けた。
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