公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 小説でしか触れたことのない世界。

 いま、わたしはそこにいる。

 王家主催のパーティーは、煌びやかでにぎやかである。多くの人が集い、思い思いにすごしている。

 あまりにもキラキラしすぎていて、目がチカチカしてくる。

 出来れば、大広間の隅っこに移動したい。あるいは、テラスへ出て行きたい。

 が、これでも一応は公爵夫人。認められてはいないけれど。

 とにかく、最低限の責務は果たさなければならない。

 ブレントンもがんばってくれていることだし。

 武の道一筋で社交が苦手なはずのブレントンは、銀仮面の下に愛想笑いを貼り付け人々と談笑している。その都度、「やっと妻を迎えることが出来ました」そう言葉を添えてわたしを紹介してくれる。

 それがまたこそばゆい。

 でも、めちゃくちゃうれしい。
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