公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「つまり、その裏切者がクラリスを殺したのか? おまえたちを裏切っていることをクラリスに知られ、その口封じに?」
「ああ、その通りだ」

 ブレントンの問いに、ジェロームは疲れきったようにうなずいた。

「部下の半分は、私兵どもに殺された。逃げだせた者を連れ、なんとか王都まで戻って来た」
「どうして急に殺そうとしたんだ? おまえたちをエルガー帝国に追い払ったら、ぼくらはなんの手出しも出来なくなる。リスクを冒してまで殺すことはないだろう? しかも国内でだ。というか、黒幕は宰相で間違いないよな? おっと、もちろんぼくらの側の宰相ってことだけど」
「ああ、あの腹黒野郎だ」

 イーサンの問いに、ジェロームは床に唾を吐き捨てようとしてやめた。

 そんな不作法なこと、当然やってはいけないわよね。
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