公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「それが……。旦那様は、ほとんど国境地域にいらっしゃいましたので……」
「だけど、婚儀の直後はしばらくいらっしゃったのでしょう? それにときどき戻って来ていたのではないかしら?」

 彼女は困ったように俯いたけれど、何かを決意したかのような表情で美貌を上げた。

「旦那様がお屋敷にいらっしゃるときにお二人でいっしょにお食事をされたり、いっしょの部屋で休まれたりということはございませんでした」
「なんですって?」

 そのように反応するしかないわよね?

「奥様、じつは……」

 彼女は、何度も口を閉じたり開いたりしている。

 言うべきか言わないべきか、迷っている様子である。

 だから、なんでも言ってほしい旨を伝えた。
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