公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 ここまできたのである。姉がどんなことをしでかしていても、ドンと受け止める覚悟は出来ている。

 おそらく、その覚悟は出来ているはず。

 彼女は、それでもまだ迷っていた。だけど、ようやく重い口を開いた。

 彼女は、王都に田舎から働きに出てきている。田舎には母親と弟妹たちがいて、マメに手紙を出したり仕送りをしているのだとか。

 いつもは執事のモーリスや雑用係のロバート・サイアーズに頼んで、街の郵便局に行ってもらっているらしい。その日、彼女は公休日だった。弟妹たちに絵の具と画用紙を買って送ろうと思いつき、外出した。

 街の雑貨店で必要な物を購入し、郵便局に向っているときである。

 あるパブの前を通りかかった。そこはオープンテラス席があって、昼間にもかかわらず何組かの客がお酒を楽しんでいたという。

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