公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 殴られたり蹴られたり、投げ飛ばされたり落とされたりなんてこともあるし、刺されそうになったり切られそうになったことも一度や二度ではない。

 よくもまあ、生きているわよね。

 つくづく思う。

 まぁそういう場面では、口うるさいボスが側にいてくれていて守ってくれる。だから、安心していたところもある。

 これって女性だからという甘えなのでしょう。

 とにかく、そこですごした数年間は、わたしにとって刺激的で思い出深いものになった。

 なにより、「何でも屋」のボスも含めメンバーがやさしく陽気だった。まるで家族経営みたいな職場だった。

 ウインズレット公爵の斡旋で王宮内の図書館で働くことを決めたとき、ボスをはじめみんな笑って送りだしてくれた。
< 55 / 356 >

この作品をシェア

pagetop