公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 父と母は、おおよろこびした。当然である。そして、当の姉も乗り気だった。

 わたしをのぞいて、みんな姉が公爵に嫁ぐことしか頭になかった。

 訂正。

 公爵がちらつかせる金貨に魅入られた。

 わたしは反対だったけれど、それを口に出して言えなかった。それどころか、反対していることを父や母に知られれば、鞭打たれてしまう。だから、言えなかった。

 いまにして思えば、たとえ鞭打たれようが足蹴にされようが、あのとき反対していればよかった。

「後悔は先に立たず」、とはよくいったものである。

 とにかく、あねは公爵に嫁いだ。
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