公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 ワオ!

 それって、まさしく小説の世界よね。

 ワクワクどきどきだわ。

 ちょっと待って、わたし。いまは、それどころではないわよね?

 この期に及んで自分で自分にツッコむ余裕があるのは、「何でも屋」で精神を鍛えられたからよね。

「後ろ手で扉を閉めろ」

 厨房に入りきったところでそう命じられ、おかしいと思った。

 もしも彼が泥棒や暗殺者だとしたら、みずから退路を断つことになる。それとも、仕事を余裕でこなせると思っているのかしら。
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