公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 わたしは、一応公爵夫人の妹。街で怪しげな仕事をしているのは体裁が悪い。だから、彼が王宮内にある王立図書館の雑用係を紹介してくれた。正直なところ、この紹介は感謝している。本の虫ともいえるわたしにとってそこは最高の職場である。それまで、好きでも時間がまったくなかったので街の図書館に本を借りに行く時間がまったくなかった。まあ、本を借りても読む時間はもっとないのだけれど。

 最高の職場で働きながら司書の資格をとれたのも、公爵の援助のお蔭である。

 その公爵は、姉と結婚してから隣国との国境地域と王都とを行き来するので忙しくなった。というのも、隣国との関係が急激に悪化してしまったから。

 姉は、王都にひとりぼっちにされてしまった。わたしも働きながら資格取得の為の勉強に忙しい。かといって、お姉様もまた男爵令嬢でありながら貴族社会とは無縁だったので、友人知人とお茶会や観覧といった社交で寂しさをまぎらわすことが出来ない。
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