公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「そうだ、イーサン。この方は、あたらしく奥様になられた方だ。それなのに、剣をむけるとは何事だ?」
「いや、その、裏をこそこそと忍び歩いていたから……」

 ハミルトンに頭ごなしに叱られた少年は、小さい体をよりいっそう小さくし、ルビー色の瞳をウルウルさせている。

「奥様に謝罪しないかっ!」
「あっ、は、はい。奥様、も、申し訳ありません」

 ハミルトンに怒鳴られ、少年は弾かれたように頭を下げた。

 その声は、先程の低くて凄みのあるものと違ってソプラノで可愛らしい。

 っていうか、イーサンって何者なの?

 俄然興味がわいてきた。
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