公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 ついさきほど可愛らしい少年なんて思っていることを反省したばかりなのに、彼のあまりの可愛らしさにキュンキュン来てしまう。

「あの、公爵閣下」

 おもわず、しゃしゃり出ていた。

 わたしのせいで可愛らしいイーサンが叱られるようなことになれば、罪悪感を覚えるにきまっている。

 自分でも「レディのくせにしゃしゃり出て」って思うけれど、そうせずにはいられなかったのだ。

 その瞬間、銀仮面の下にある目がわたしを射た。

 比喩表現ではない。ほんとうに矢で射られたような鋭い「睨み」だった。

 厨房内の淡い照明の中、彼の瞳が真夏の空のような蒼色であることに気がついた。

 その色は、わたしが一番好きな色。

 まぁ、わたしの好みの色なんてどうでもいいけれど。
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