公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 控えの間を奥まで進み、奥の扉をノックした。

 すぐに笑い声がやみ、と思った瞬間には扉が開いていた。

「ミユ様」

 扉を開けてくれたのは、童顔のイーサンである。

 やっぱり可愛いわ。

 えくぼのある彼の顔は、よりいっそう少年っぽい。

「お話し中失礼します。お夜食をお持ちしました」
「お待ちしておりました」

 イーサンは、食べ盛りの少年のようにルビー色の瞳を輝かせた。
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