公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「持ちましょう」

 イーサンが言ってくれたけど断り、どこに置けばいいか尋ねた。

 机の上に、と言われた。

 見ると、テラス側のガラス扉の近くに執務室にあるような樫材の重厚な机が置いてある。

 歩きだそうとした瞬間、不意に胸元からトレイが消えた。

「公爵閣下」

 公爵はサッとトレイをとると、さっさと机に歩きだしたのである。

 慌てふためいてしまった。が、すぐにその大きな背を追いかけていた。

「これはうまそうだ」

 彼は、わたしが追いつくまでに埃よけにかぶせてある布巾をとりのぞいていた。
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