きみのチョコに毒混ぜた
「ちー、1組で数学の抜き打ちテストあったってまじ?」
「うん、まじ。ていうか勝手に入ってくるのやめてよ、洸」
きみはいつも突然やって来る。
幼なじみだからって、人の部屋のドアをノックも無しに開けないでほしい。
お母さんも、幼なじみだからって、こんな男をひとり娘の部屋に入れないでほしい。
他に仲のいい女の子たくさんいるくせに、いつも私のところに来るの、やめてほしい。
それでも毎回受け入れてしまう、どこか喜んでしまっている私がいちばんやめたいけれど。
ちー、って、きみしか呼ばない名前が。
いつから特別になったのかもう覚えてない。
きみの声は私の名前を呼ぶためだけにあるわけじゃない。
きみがノックもせずに入る部屋はきっと私の部屋だけじゃない。
きみにとって私は、特別じゃない。
その事実を思い知らされるたびに、きみのこと、ひとりじめして殺してしまいたくなるときがある。
……なんて、そんな物騒なこともちろんしないけれど。