鬼上官と深夜のオフィス
バラバラに砕け散った理性の欠片を必死の思いで拾い集め、佐久間君の肩をグイと押しやり抵抗を試みる。

「そ……そうじゃなくて!ちょっと、一旦お互いに冷静になって話を話をしようよ!」

居住まいを直し胸を両腕でガードする様にして、佐久間君に問い出す。

「……大体私の事好きって軽率に言うけど、私の一体何を好きって言うのよ?会社での姿しか私の事知らないじゃない?」

人の一面だけを見て、好きとか何とか言っちゃうのはどうなんだろう?それ以外の面を見てしまった時に、「なんか違う!」なんて言って嫌われてしまったらなんとも悲しくなってしまうではないか。

好きになるならもっと時間をかけて。
相手の色々な面を見てから。

……うん。
私はものすごく今、いい事を言ったような気がするぞ。

すると佐久間君は、先輩のそんな慎重なところも好きですけどね、と言いながらフゥと大きく息を吐く。

「そうは言いますけどね、先輩。会社での姿だけで、好きになっちゃ駄目なんですか?残業も合わせたら同じフロアに一日8時間以上も一緒なんですよ?それだけ一緒にいたなら好きになっちゃうのも仕方ないって思いません?」

首を傾げて少し照れくさそうに、こちらを見つめてくるのだった。

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