鬼上官と深夜のオフィス
――

頑張ればいつかは仕事は終わる!頑張れ!頑張れ俺!!

……自宅にいてもソワソワ落ち着かないので取りあえず朝の7時に職場にやってきた俺は、完全なる寝不足のまま根性だけで、現在作業を進めているのであった。

気を緩めると、斜め前の席で作業する先輩へと意識は向かい、昨夜の先輩との情事を思い出す。先輩があんなに乱れて可愛い声で喘ぐだなんて全くの嬉しい誤算だった。

嬉しくはあるが、今後の計算は完璧に狂ってしまった。
今の所警察に突き出されることはなさそうだけれど、先輩にとんだ強姦野郎だと警戒されてしまったらどうしよう。
せっかく課長を言いくるめてまでペアにしてもらって、好感度を上げる作戦だったというのに、これでは振り出しに戻るばかりかマイナスからのスタートではないか。

悶々としつつ表情だけはクールに保って先輩の書類のチェックをしていると、……珍しいことに記入漏れがある。作業のスピードもいつもよりも心無しか遅いような気もする。

先輩も、どうやら本調子では無い様子。体調が悪いのかな?とチラリ様子をうがってみる。
目と目が合えば、ボッと顔を赤らめ慌てて視線をそらす先輩の姿。
……可愛い。

昨夜の事は予想外の出来事だったけれど、先輩はどうやら俺を意識してくれるようになったらしい。
大変喜ばしい事である。

ああもう。
今が休日出勤で期日の迫る作業なんかしてなければ、先輩にもう一度好きだと言ってやりたいのに。
押し倒して先輩の心が完璧に俺のものになるまで何度もその奥を貫いてやりたいのに。

もどかしい気持ちで一杯になるが、今は我慢の時である。
先輩が俺を好きになってくれるまでは今迄通り一同僚として接していよう。

そうしてひたすら鉄の意志でもって、先輩に再度手を出してしまわないように我慢をし、いつも通りの振る舞いをするのみと、固く決意する俺なのだった。


……が、その決意が1週間後先輩の迂闊な一言のせいでまたしても脆くも崩れ去ることになるなんて、この時俺は思いもしないのであった。

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