鬼上官と深夜のオフィス
ーー

そしていよいよデート前日となった本日花の金曜日。
明日の為にちょっと洋服なんかも買いに行ってみようかな?なんて考えていると、

「先輩、急なんですけど、この書類来週朝イチ提出なんで作成お願いしてもいいですか?俺も手伝うんで。」

終業ギリギリのタイミングで私の元に作業の依頼を持ち込んで来たのは、膨大な量のファイルを持った2つ下の佐久間君。

件の後輩女子の寿退社に伴い、一緒に作業する営業事務が不在となった、営業部の絶対的エースとして活躍する佐久間君の新たなパートナーとして、仕事を始めて3ヶ月。
こんな事にももう慣れた。
……慣れたけど、頻繁に残業が発生する事案ばかりってどういうことなんだろう。
急ぎの案件を受け持ち過ぎなんじゃないの?

こちらの不平不満轟く心中などつゆ知らず。
佐久間君は大きく伸びをしてから席につくと、キリリとした顔つきで「さーて、それでは第2ラウンドといきますか」と呟くのだった。

モデルさながらの小顔で、スーツが似合う高身長のシュッとした佇まいに、光に透けると黄金色に輝きふわふわと波打つ柔らかそうな髪と大きな瞳が印象的。

つい最近では19週連続営業売り上げナンバーワンという前人未到の記録を打ち立てた、正に生ける営業部の伝説。

イケメンで仕事も出来るとなりゃ異性関係も派手そうなものだが、浮いた話は全く無い。
食事の誘いをかけても仕事が忙しいからと断わられてしまうので、そんな彼は「会社大好き、仕事ラブ!」な、完全なる社畜であると専らな噂なのだった。

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