鬼上官と深夜のオフィス
そして真剣な表情で「私の何が好きだって言うの?」と聞くものだから、こちらの思いを全て吐き出すことにした。

どうしても先輩と一緒にいたくて課長に無理を言って仕事のパートナーにしてもらったこと。
先輩に格好いいところを見せたくて仕事を頑張っていたこと。
泥臭いまでのこちらの思いを全て先輩にさらけ出した。
全て舞台の整った状態で格好良く告白したかったのに、なんとも勢いだけの格好悪い告白になってしまった。
その上逃げようとする先輩に「もっと好きになってみせるから会社以外の先輩の姿も見せて?」なんて、みっともなくもつい縋りついてしまった。

これまでのイメージ戦略が水の泡だ。
脱力する俺を見つめる先輩は、それでも少し納得いかなそうな様子だったが、気が変わったのかちょっと照れくささを隠すように怒った口調で俺にキスをしてくれた。

「じゃあ会社以外の私については、そのうち。追々ね。」

……追々?

追々ってことは、これから先に続く何かがあるってこと?

どん底の気持ちから天に舞い上がりそうな気持ちになる俺は、先輩をぎゅうと抱きしめる。

「じゃあ取り敢えず、これからゆっくり別な所で、今の続きをしてもいいですか?」

調子に乗って耳元で囁いてみると、先輩の顔はみるみるまたしても赤くなり、そして消えそうな声で、

「……いいけど……。もう。バカぁ。」

可愛らしい上目遣いでこちらを睨み、先輩は了承の言葉を口にするのだった。

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