さよなら、真夏のメランコリー
『私、大阪に来て一日目なんだけど! 展開が早すぎて、ついていけないんだけど! っていうか、美波の気持ちすら知らなかったんだけどー!』


彼女は怒っている様子はないけれど、なんだか悔しそうだった。
ただ、私だってまだ半信半疑でいる。


今朝、家を出た時には……もっと言えば、観覧車に乗った時ですら、こんなことになるなんて思いもしなかったんだから……。


輝先輩が私を好きだったなんて考えたこともなかった。
彼との関係は、同士に近いものだとすら思っていた。


それもきっと間違いじゃない。
その上で、輝先輩は私を好きでいてくれて、私も彼のことを好きになった……ということだ。


『いいなぁ、彼氏とラブラブな夏休みとか……』

「ラブラブって……! まだそんなんじゃないし!」

『まだ、でしょ? これから手とか繋ぐじゃん?』

「……そ、そうかも」

『……その反応はもう繋いだな』

「ちょっ……! なんでわかるの!」

『え~、今日付き合ったのに、もう手繋いでるとか……! 輝先輩って、やっぱり積極的なタイプなんだね。これはキスするのも早そうだなぁ』

「なっ……? キッ……キス、なんて!」

『次に会った時にされちゃうかもよ~?』


真菜の声色が、だんだんからかいを含み始める。


「しない! しないってば!」


焦る私に、彼女がケラケラと笑った。

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