さよなら、真夏のメランコリー
夜にはきちんと話すつもりで、輝先輩にラインを送った。


【昨日はごめんなさい。ちゃんと話したいです】


たった二行だったけれど、彼は読んだら返事をくれると思っていた。
ところが、その日どころか数日経っても既読がつくことはなく、今年が終わろうとしていた。


(なんで……?)


終業式のことを思い返しては、不安が募っていく。


あの日の私は、自分の感情をぶつけるばかりだった。
輝先輩の気持ちを考えることも、彼を思いやることも、そして信じることもできなかった。


投げつけてしまったひどい言葉たちが、脳内でグルグルと回る。


(先輩、もう私のことが嫌になったのかな? ひどいこと言っちゃったから……)


自分の言動を振り返るほどに、輝先輩から返事をもらえなくても仕方がないのかもしれない……と思えた。
あのあと、私は彼の電話やラインを無視していたのだから。


輝先輩のことを考えてばかりで、冬休みの課題が手につかない。
バイト中も、気づけばぼんやりしてしまう。


このままではいけないと思った私は、三十日になってようやくバイト帰りに彼の家に行ってみたけれど……。
インターホンを鳴らしても誰も出てこなくて、家の中は真っ暗のようだった。


「どこかに行ってるのかな……」


ぽつりと零れた声が、冬の冷たい空気の中に消えていく。
不安を抱えながら人の気配がない家の前で一時間近く待ったあと、結局は諦めて帰路に就いた。

< 157 / 194 >

この作品をシェア

pagetop