さよなら、真夏のメランコリー
「ううん、大丈夫」


本当は、ちっとも大丈夫なんかじゃない。
もうずっと前からバッグの中で出番を待っている退部届は、繰り返し手にしていたせいでグチャグチャだ。


「遠慮なんかしないでよ? 私と美波の仲なんだから」


ビシッと指を差して私を真っ直ぐ見てくる真菜に、苦笑いを向ける。
明るい笑顔は見せられなかったけれど、今はまだ許してほしい。


「遠慮してるわけじゃないよ。でも、これはね……ひとりで出しに行かないといけないと思うから……」


ぽつり、震えそうな声が教室内の喧騒にかき消されていく。
それだけで、なんだか無性に泣きそうになってしまった。


「じゃあさ、聞いてほしいこととかあったら、電話でもLINEでもしてきてよ! 夜遅くてもいいし、いつでも待ってるから」

「うん。ありがとう」


心細さを解してくれるような優しい表情に、今度こそちゃんと笑顔を返すことができた気がする。


彼女は心配そうにしながらも、いつも通りに振る舞ってくれた。
それがなんだか無性に嬉しかった。

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