さよなら、真夏のメランコリー
「あっちで食べようよ」


少し歩いて、ガードレールに腰掛ける。


「こんなところで食べていいの? 邪魔にならない?」

「端っこだし、平気でしょ。それに、みんなわりとここに座ってるし」


真菜の言葉通り、確かにガードレールには学生たちが並んでいる。
私たちのようにクレープを手にしている人もいれば、クレープ屋の並びにあるアイスクリーム屋のアイスを食べている人もいる。


数人でたむろしている男子の中には、コンビニのおにぎりを頬張っている人もいた。
さらには、行き交う人たちは私たちのことなんて気にしていない。


「放課後の買い食いなんて、美波は高校に入って初めてじゃない?」


彼女の問いに、小さく頷く。


学校がある日は、いつも部活で帰りが遅くて寄り道なんてできなかった。
テスト週間で部活がない日は、日頃部活にばかり力を入れていた分、勉強するだけで精一杯だった。


春休みも夏休みも冬休みも部活はあって、こうして遊ぶ時間なんてなかった。
時間があったとしても、体作りのために間食や甘いものは極力控えていた。


たとえば、間食するのならおにぎりやフルーツが多かったし、クレープを買い食いするなんて考えたこともない。
それが私にとっての日常だった。


きっと、流行を追うのが好きな高校生から見れば、つまらない生活だろう。
だけど、私は練習こそつらくても、つまらないと思ったことはなかった。


どんな時でもずっと、根底には『水泳が好き』という気持ちがあったから……。

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