さよなら、真夏のメランコリー
私が住んでいる街は、都会でも田舎でもない。
駅前にはスーパーやドラッグストアが並び、コンビニも数社が点在している。


生活にはとても便利だし、私もドラッグストアとコンビニは常連だ。
とはいえ、私が知る限りおしゃれな店は皆無だった。


カフェなんてないし、あるのは六十代くらいの女性が経営する古い喫茶店くらい。
あとは、スナックとか個人店の居酒屋とか……。大人が通うような店ばかり。


高校生が楽しめるようなところは、すぐに思い浮かばなかった。


「……お気に入りの店とかないの?」

「おしゃれな店なんてないし……。高校生が遊べそうなのはカラオケくらいだよ」

「そっか。学校の近くだと知り合いがいると思ってここにしたけど、それなら別の駅で降りるべきだったか」


輝先輩は、真剣な顔で「どうするかなー」と悩み出した。


「っていうか、本当に奢ってくれなくてもいいから……」

「それは俺が嫌なんだよ」


意外と義理堅いのか、彼が眉を寄せる。


「……じゃあ、コンビニに行くか。どっち?」

「えっと……こっちにも反対側にもあるけど……」

「美波の好きな方でいいよ」


輝先輩に促され、駅前にあるコンビニに入った。

< 55 / 194 >

この作品をシェア

pagetop