さよなら、真夏のメランコリー
「してるよ。勉強は好きじゃないけど、選手じゃない以上はちゃんと勉強しないわけにはいかないし」

「いや、選手でも勉強しなきゃいけないだろ」

「そういう輝先輩は勉強してるの?」

「……俺、勉強は嫌いなんだよなー」

「なにそれ。人のこと言ってる場合じゃないじゃん」

「でも、ちゃんとしてるよ。選手じゃなくなったんだから、せめて成績は学年で真ん中くらいにはいないとな」

「真ん中かぁ……」

「それより下?」


ニッと笑われて、さっきよりも深く眉間に皺が寄る。


「微妙に下ですけど」

「やばいじゃん! 油断してると、どんどん落ちるぞ」

「うるさいな。これからちゃんとやるもん」


今までは部活を言い訳にできた。
スイミングスクールにも通っていたし、私の毎日は水泳一色だった。


課題をこなすのが精一杯で、予習も復習もほとんどしたことがない。
おかげで、お世辞にも成績はそんなにいい方じゃなかった。


だけど、もう言い訳はできない。


時間は充分にあるし、私が水中に戻ることはないのだ。
せめて、普通程度の成績を収めておかなければいけないだろう。

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