さよなら、真夏のメランコリー
「そろそろ行くね」

「また明日ね」

「うん、ばいばい」


真菜と軽く手を振り合い、教室を後にする。
テスト期間が終わった廊下は、どこか浮足立ったように賑わっていた。


生徒たちはみんな、解放感に包まれた顔で笑っている。
反して、予定のない私は、昇降口に向かいながら気分が沈んでいく。


それでも、なんでもないふりをして歩いていた時。

「美波?」

真正面から、千夏が歩いてきた。


「あっ……千夏……」

「これから帰るの?」

「う、うん……」

「そっか」


彼女も私も、声に気まずさが混じっていた。
賑やかな廊下で、私たちの間にだけ重苦しい空気が流れる。


「あのさ……この間、ごめんね……」


そんな中、千夏が発した言葉に、胸の奥がざわめいた。


「……っ」


無神経な未恵の態度のことか、あの場にいて彼女を止められなかったことか。
どちらに対する謝罪はわからなかった。


ただ、眉を下げる千夏を前に心穏やかではいられない。
なんとか忘れていたことを思い出すはめになったせいで、やり場のない感情が込み上げてきた。

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