さよなら、真夏のメランコリー
第三倉庫の裏に着くと、輝先輩が以前と同じように地面に腰を下ろした。


(助かった……)


その隣に座った私は、心の中で呟きながら息を吐く。
もし、彼が来てくれるのがあと一歩遅かったら……。私はきっと、千夏にひどい言葉を吐いていたと思う。


もっとも、輝先輩は偶然通りがかっただけだろうけれど……。
それを理解した上でも、修羅場にならなかったことにホッとしていた。


「嫌なことでも言われた?」

「……うん。でも、たぶん悪気はなくて……私を思いやってのことだと思うけど、結構きつかった……」

「マネージャーにならないか? とか」

「……どうしてわかるの?」


瞠目した私に、彼が自嘲交じりの微笑を漏らす。


「俺も、元チームメイトから同じことを言われたから」


輝先輩の横顔が悲しげで、胸の奥がズキッと痛む。


「内申がよくなるからって顧問にも勧められたけど、余計なお世話だよな」


空気に溶けていく声音にも、悲しみの感情が乗っていた。


「まだ心の中では折り合いもついてなくて……それでも必死に立ち直ろうとしてるのに、刺激するなって話だよ」


彼の言っていることがよくわかるからこそ、ただ頷くことしかできない。

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