さよなら、真夏のメランコリー
「まぁ、バイトとか受験勉強があるから、ずっとってわけにはいかないけど」
苦笑を零す輝先輩を前に、断り文句なんて思い浮かばなかった。
「……なにするの?」
「買い食いとか、食べ歩きとか?」
「食べることばっかりだね」
「遊園地でも水族館でもいいし、海に行くのもいいな。でも、遊んでばっかりなのはやばいから、たまには一緒に課題でもするか」
誘い文句は、特別なものじゃない。
それでも、私にとっては特別に思えた。
「うん」
「あ、あとは祭りとか花火大会だな」
「いいね、夏って感じ」
ここから程近い場所で開催されるお祭りも花火大会も、行ったことがなかった。
中学まではスイミングスクールの合宿の時期と被っていたし、高校に入ってからはインターハイ前でコーチの許可が下りなかった。
今思えば厳しいルールだったけれど、当時はそれが当たり前だった。
部員の中にはこっそり遊びに行っていた子がいるのも知っている。
だけど、私はその気の緩みがけがや事故に繋がらないかと不安で、どうしてもルールを破れなかった。
家の中にいても聞こえる花火の音に物寂しくなっても、インターハイ優勝という目標だけを心の支えにして、なにもかも我慢してきた。
「俺、去年と一昨年は祭りも花火も行かなかったんだよな」
「私も」
夏にも共通点があったことに、どちらからともなく笑ってしまう。
予定のない日の過ごし方がわからなかった。
空白だらけの夏休みが来るのが怖かった。
それなのに、今は少しだけ楽しみに思える私がいた。
苦笑を零す輝先輩を前に、断り文句なんて思い浮かばなかった。
「……なにするの?」
「買い食いとか、食べ歩きとか?」
「食べることばっかりだね」
「遊園地でも水族館でもいいし、海に行くのもいいな。でも、遊んでばっかりなのはやばいから、たまには一緒に課題でもするか」
誘い文句は、特別なものじゃない。
それでも、私にとっては特別に思えた。
「うん」
「あ、あとは祭りとか花火大会だな」
「いいね、夏って感じ」
ここから程近い場所で開催されるお祭りも花火大会も、行ったことがなかった。
中学まではスイミングスクールの合宿の時期と被っていたし、高校に入ってからはインターハイ前でコーチの許可が下りなかった。
今思えば厳しいルールだったけれど、当時はそれが当たり前だった。
部員の中にはこっそり遊びに行っていた子がいるのも知っている。
だけど、私はその気の緩みがけがや事故に繋がらないかと不安で、どうしてもルールを破れなかった。
家の中にいても聞こえる花火の音に物寂しくなっても、インターハイ優勝という目標だけを心の支えにして、なにもかも我慢してきた。
「俺、去年と一昨年は祭りも花火も行かなかったんだよな」
「私も」
夏にも共通点があったことに、どちらからともなく笑ってしまう。
予定のない日の過ごし方がわからなかった。
空白だらけの夏休みが来るのが怖かった。
それなのに、今は少しだけ楽しみに思える私がいた。