さよなら、真夏のメランコリー
ビヨンドでは、八百円までのメニューなら賄いとして食べられるらしい。
それ以上の金額のものでも、バイト代から差し引いてもらうという条件下でなら好きなメニューを注文できるのだとか。
日替わりランチがちょうど八百円らしく、だいたいのスタッフはそれを選ぶことも教えてくれた。


ファミレスもたまにしか行くことがなかった私からすれば、とても魅力的に思える。
ひとつ楽しみができたことで、やる気が増していった。


「テーブルは早く片付けて、しっかり拭いて消毒ね」

「はい」

「混んでる時間帯だと片付けまで手が回らなかったりするけど、テーブルが片付かないとお客様を通せないから注意してね」


頷いて、メモを取って、スタッフに挨拶をして……。目まぐるしく時間は過ぎていき、気づけば一時間が経っていた。


「今日はとりあえず全体の流れと雰囲気を覚えて。レジは何回かバイトに入ってもらってから覚えてもらうから、まずは注文の取り方と料理の運び方ね」


菜々緒さんは、最後に全体の流れをもう一度説明してくれた。


「ここまででなにか質問はある?」

「えっと……」


メモを見返してみたけれど、質問が浮かんでこない。


「なんて訊かれても、まだわからないよね」


私が戸惑っていると、彼女がすかさずフォローを入れてくれた。

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