さよなら、真夏のメランコリー
「一応、できるだけ近くで見てるし、いつでも声をかけてね。私や真菜ちゃんが近くにいない時は、他の人に訊いてもいいし、質問とかは遠慮なくするといいよ」

「はい。ありがとうございます」


優しく丁寧に指導してもらえそうなことに、ひとまず安堵する。
まだ不安と緊張は消えないけれど、ここでなら頑張れそうだと思った。


「よし、まずは片付けからやってみようか」

「はい」


菜々緒さんとともに、お客様がいなくなったテーブルを片付けに行く。
もたもたしてしまう私に反して、彼女はとても手際がよかった。


「私も最初は失敗したり手際よくできなかったりしたけど、すぐに慣れるよ」


だけど、菜々緒さんは私のそんな姿を見ても微笑んでくれた。
彼女以外のスタッフもみんな優しくて、初日だというのに居心地は悪くなかった。


真菜と一緒だということもあって、三時間もすれば緊張感が少しずつ解れ始め、人生初のバイトはどうにか乗り切ることができた。

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