さよなら、真夏のメランコリー
「籍だけ残しておかせるわけにはいかないが、マネージャーとしてでも来年の夏まで在籍していれば、内申点にもなる。進学でも就職でも内申点は少しでもあるに越したことはないし、考え直してみないか?」


スポーツ推薦でこの東緑が丘(ひがしみどりがおか)高校に入学した私は、幽霊部員として部に残ることはできない。
ただ、マネージャーとして残るという選択肢はまだ残されている。
あと一年在籍していれば、進路で有利に働くこともあるかもしれない。


「いえ……私は、もう……」


それをわかっていても、私にはどうしてもその選択肢を選ぶ勇気はなかった。


古谷先生は、太い眉を下げてため息をつく。
私は、先生から逃げるように俯いてしまった。


高校二年の一学期の今、来年の夏まではまだ一年以上もある。
ずっと選手として過ごしてきた部活内でこの先マネージャーとしてやっていけるほど、私は強くもなければ立ち直れてもいない。


内申点のことを考えれば、どうするのが最善なのかはわかるのに……。頭と心は、どうしたって寄り添えないほどに乖離している。
そんな私が出す答えは、どれだけ時間をかけても〝退部〟しかなかった。

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