さよなら、真夏のメランコリー
「家の近所か。美波がわかりやすくて助かった」

「ぜっ、絶対に来ないでよ!」

「次のバイトはいつ?」

「言わない! 教えない!」

「そんなに嫌がられると、絶対に行きたくなるんだけど」

「性格悪いよ!」

「いやいや、美波が心配だから様子を見に行こうとしてるんだよ。優しいだろ?」


にっこりと微笑まれても、それが方便だということくらいわかっている。


「楽しみだなー、美波の制服姿」


楽しげな声音を表情に、抗議の目を向けてみる。
だけど、輝先輩は動じる素振りもなく、コーラを飲んでいるだけだった。


(絶対に見られたくないんだけど……!)


「そろそろ行くか」

「……うん」


未だに抗議したい気持ちはあるけれど、立ち上がった彼に頷く。


今日は、これから図書館に行くことになっている。
遊ぶ前に少しでも夏休みの課題を片付けよう、という計画だ。


次に会う時にはどこかに遊びに行く予定だけれど、勉強が苦手な私と受験生の輝先輩にとって課題はできるだけ早く終わらせておいた方がいいはず。
夏休みに入って最初に会う理由が課題なんて、正直に言うと気乗りしなかった。


ただ、彼と過ごす束の間のランチタイムは、意外にも楽しかった。
もちろん、バイト先にだけは来ないでほしいけれど……。

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