さよなら、真夏のメランコリー
ゴンドラに乗って進むシューティングアトラクションは、下手すぎた私のスコアを見た輝先輩がお腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。
回転するジェットコースターは予想以上にスリルがあって、素で思い切り叫んでしまった。


コーヒーカップは容赦なくグルグル回して、ふたりしてフラフラになった。
お化け屋敷だけは避けたかったのに、彼に引っ張られて半泣きになりそうだった。


だけど、輝先輩と一緒にいると、自然と笑っている私がいる。
怒っていても本気でムカつくことはなくて、拗ねているのは〝ふり〟でしかない。


本当はちっとも拗ねてなんかいなくて、楽しそうにしている彼を見ていると不思議と本気で怒る気にはなれなかった。


「腹減らない?」

「うん、空いた」

「ちょっと休憩するかー」

「チュロス食べたい」

「それより昼ご飯が先だろ」

「チュロスがご飯でもいいよ」

「却下。スイーツはご飯に入りません」

「おやつにバナナは入りますか? って質問となんか似てるね」

「美波はどっちだと思う? バナナはおやつかどうかってやつ」

「私にとって、バナナって栄養補助食品的な感じだったんだよね」

「あー、わかる。レース前とかに手っ取り早く食べられるしな」

「そうそう。消化にいいもので、エネルギーになりやすいって感じ」

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