さよなら、真夏のメランコリー
選手だった時、普段はもちろん、特に試合前には食べ物にも気を遣った。
食べる時間、口にするもの、その量やタイミングまで、随分と指導された。
私は、白米が好きだからおにぎりがいいと思うこともあったけれど、中でも栄養補助食品とバナナはよく食べていた。
「ゼリーとかバナナより、俺はおにぎりとかパンが食べたかったんだけどなー」
「うん、わかる。バナナも嫌いじゃないんだけど、おにぎりの方が好きだった」
「そうそう。あと、バナナは頻繁に食べるから飽きてた。だいたい、レース前に腹減ったら、バナナなんかじゃ足りないって」
ふふっと笑ったところで、ハッと気づく。
選手だった時のことを自然と話している――ということに。
もう二度と選手として戻れないとわかった日から、私は故意に当時の話を避けていた。
まだ受け入れるほど前には進めてなくて、どうしたって苦しくてつらくて……。現実だとわかっているのに、自ら口にすることはできなかった。
家族や真菜、私の周囲にいる人たちも、私の前では話すことはなかった。
だけど、今は普通に話せている。まるで思い出話のひとつみたいに……。
食べる時間、口にするもの、その量やタイミングまで、随分と指導された。
私は、白米が好きだからおにぎりがいいと思うこともあったけれど、中でも栄養補助食品とバナナはよく食べていた。
「ゼリーとかバナナより、俺はおにぎりとかパンが食べたかったんだけどなー」
「うん、わかる。バナナも嫌いじゃないんだけど、おにぎりの方が好きだった」
「そうそう。あと、バナナは頻繁に食べるから飽きてた。だいたい、レース前に腹減ったら、バナナなんかじゃ足りないって」
ふふっと笑ったところで、ハッと気づく。
選手だった時のことを自然と話している――ということに。
もう二度と選手として戻れないとわかった日から、私は故意に当時の話を避けていた。
まだ受け入れるほど前には進めてなくて、どうしたって苦しくてつらくて……。現実だとわかっているのに、自ら口にすることはできなかった。
家族や真菜、私の周囲にいる人たちも、私の前では話すことはなかった。
だけど、今は普通に話せている。まるで思い出話のひとつみたいに……。